透ける壁
光が透けるこの壁,何か分かりますか?
ヒント1:昔は,ある工程の建築現場に広がる当たり前の光景でした.
ヒント2:素材は竹です.
ヒント3:う~ん,もうヒントが見当たりません・・・,
そう答えは竹小舞.土壁の下地です.施工中の建物内から見ると,小舞を抜けた光が室内に伸び,うっすらと光の道が見えてとてもきれいなんです.昔の人もこの美しさには惹かれていたようで,「下地窓」といって土壁を一部塗り残して,竹小舞を現わしにした仕上げがあります.皆さんも茶室等で目にしたことはありませんか?(茶室は皮付の葭(ヨシ)をその部分だけ別に編んで使うことが多いそうです)なので小舞の現場を見るたびに,「隠れちゃうのはもったいないな~」と思うのですが,きっとこの美しさが土壁を支える「強さ」なんでしょうね.これは小舞に限ったことじゃありません,木造の軸組の美しさは強さに繋がり,瓦葺の屋根もその美しさは,雨仕舞の良さに繋がるのです.(←自論)
しかしながら竹小舞を編む職人さんは減少の一途を辿っています.現在進行中の物件も,写真のお爺さんとお婆さんの夫婦が編みに来てくれており,なかなか若い職人さんを見たことがありません.ふと20年,30年後,小舞下地の土壁は施工可能かを考えてしまいますよね.現在もラスボード下地に比べると多少コストは割高になりますが,近い将来,竹小舞は最高級下地としてセレブリティーだけのものになっているのかも「あら奥様,素敵な竹小舞じゃなくって」なんて具合に......それは困る!!!
土壁に興味のある方は,今月号のチルチンびとに小舞下地の「黒の家」が掲載されています.是非ご覧下さい.
スタッフS.O