真珠会館
先日、恩師 光安義光が33才という若さで設計したDOCOMOMO Japanに
選定されている真珠会館が、とうとう壊されるという事で最後に見て
子息の義博さん(建築家)に話を聞きたいと思い出かけました。
建築は昭和27年(築70年)の竣工で居留地の東端に建っています。
当時は周囲に木造の建物しかなく神戸に2台しかなかったエレベーターが入っています。
真珠と共に戦後復興の希望として輝いていたと思います。
先生の新しい時代の建築をつくるというエネルギーを随所に感じます。
特に風除室、屋上へ上がるラセン階段、スチールサッシュは秀逸です。
モダンな照明器具や椅子も設計されています。
また環境にも配慮されていて、クーラーがない時代に風を呼び込むプラン・セクションになっていました。
阪神大震災では近くの神戸市役所が全壊したのに、真珠会館はクラックひとつ入らず
ガラスも一枚も割れなかったそうです。
とても大切にされていて、ほぼ竣工時のまま使われています。
そんな建築も経済・資本の理論で壊されるのはとても残念なことです。
阪神大震災では多くの歴史的建物・近代建築が失われ街が記憶喪失になったと
言われましたが、またひとつ街の貴重な記憶が失われます。
3月には見学会があるようです。
建築は希望という未来のエキスを一滴注ぎ込むことで建築になる
という話を思い出しながら神戸を後にしました。
神家昭雄